ち・し・き・りが不明瞭…側音化構音とは?か行・さ行の記事に当てはまらなかった方へ【言語聴覚士が解説】
これまで、か行・さ行・た行・ら行の発音についての記事をご紹介してきましたが、「記事を読んでみたけど、うちの子の発音はちょっと違う気がする」という声をいただくことがあります。
「さかな」が「たかな」になる、「らいおん」が「だいおん」になる——このような分かりやすい置き換えではなく、「し」や「ち」が、こもったような、濁ったような音になるというお悩みです。これは「側音化構音(そくおんかこうおん)」と呼ばれる発音の誤りで、これまでご紹介してきた発音の未熟さとは、性質が少し異なります。この記事では、側音化構音とは何か、おうちでのチェックポイント、そしてどう対応すればいいかを、言語聴覚士の視点で解説します。

側音化構音とは——イ段の音がこもる・濁る発音の誤り
側音化構音とは、「い」の段(し・ち・じ・き・り など)の音が、口の横から息が漏れるように出てしまい、こもった・濁ったような響きになる発音の誤りです。
「さかな」が「たかな」になるような誤りは、周りが聞いてもすぐに「違う音になっている」と分かります。ですが側音化構音は、「言えているようで、なんだか変」「聞き取れるけれど、こもって聞こえる」という、分かりにくい誤り方をするのが特徴です。そのため、保護者の方も「発音が下手なのかな」くらいに捉えて、見過ごされてしまうことが少なくありません。
次のような聞こえ方をすることがあります。
- 「し」が「ひ」や「き」に近く聞こえる
- 「ち」が「き」に近く聞こえる
- 「り」が「ぎ」に近く聞こえる
- 「しゃ・ちゃ・りゃ」など、小さい「ゃゅょ」が付く音も同じようにこもる
見分け方——おうちでできるチェックポイント
側音化構音には、耳で聞く以外に、お口の動かし方を見るという見分け方もあります。お子さんに「い」「し」「ち」を含むことばを言ってもらいながら、次の様子がないか観察してみてください。
- 「い」「し」「ち」を言うとき、口の片方の端だけがクィッと引きつるように動く
- あご(下顎)が、上下ではなく左右にずれるように動く
- その音のときだけ、一瞬顔が引きつったような表情になる
これは、本来は口の中央から出るはずの息が、舌が左右どちらかに偏ることで、口の端から漏れて出てしまうために起こります。鏡の前で言ってもらうと、比較的気づきやすいサインです。
☑ 「い・し・ち」の音のとき、口の片方だけ引きつる
☑ あごが左右にずれる
☑ 言えているはずなのに、なんとなくこもって聞こえる
この3つに心当たりがあれば、次の章もあわせてご確認ください。
なぜ、か行・さ行の発音のように自然には治りにくいのか
これまでの記事では、か行・さ行・た行・ら行の発音の未熟さについて、「多くの場合、成長とともに自然に獲得されていく」とお伝えしてきました。ですが、側音化構音はこれとは仕組みが異なります。
通常、「い」や「し」などの音は、舌の中央を使って、息を口の真ん中から出すことで作られます。側音化構音では、舌の使い方が左右どちらかに偏っていて、息の通り道そのものが真ん中からずれてしまっている状態です。これは「音の置き換え」ではなく「発音するときの動かし方そのもののクセ」なので、年齢が上がって口や舌の力がついても、自然には元の動かし方に戻りにくいという特徴があります。
実際に、側音化構音のまま大人になり、長年発音に悩まれてきた方からのご相談も少なくありません。「様子を見ましょう」で終わらせず、気になった時点で専門家に見てもらうことをおすすめしたい発音の誤りです。

「様子見でいい発音」と「専門的に見てもらいたい発音」があるという点は、ぜひ知っておいていただきたいです。どちらか分からないときも、まずは相談していただいて大丈夫ですよ。
家庭でしてあげられること・してはいけないこと
他の発音の誤りと同じく、家庭で無理に言い直させたり、繰り返し訂正したりするのは避けてください。うまく言えないことを本人が気にするようになり、話すこと自体に自信をなくしてしまうことがあります。
ただし、か行・さ行の発音のように「そのうち自然に獲得される」タイプの誤りとは異なり、側音化構音は専門的な評価と、段階を踏んだ練習が必要になることがほとんどです。家庭でできることは、次の2つです。
- 正しい発音を、さりげなく聞かせてあげる(訂正はしない)
- 気になる場合は、早めに専門家に相談し、正確な評価を受ける
「様子を見ているうちに直るかもしれない」と先延ばしにするより、一度専門家に見てもらい、練習が必要かどうかを判断してもらう方が、結果的にお子さんの負担が少なく済むことが多いです。
何歳ごろに気づかれることが多いか
側音化構音は、他の音の発達が落ち着いてくる5〜6歳前後で気づかれることが多い誤りです。か行・さ行・た行など、他の音は年齢とともに整ってきたのに、「い・し・ち」だけがなんとなく気になる、という形で表面化してくるケースをよく見かけます。就学を意識するタイミングと重なることも多く、「小学校に入る前に、はっきりさせておきたい」というご相談も多くいただきます。
どこに相談すればいいか
側音化構音が気になったときの相談先には、いくつかの選択肢があります。
- 地域の発達相談窓口(保健センターなど)
- ことばの教室(通級指導教室)※就学後
- 児童発達支援センターなど、言語聴覚士が在籍する施設
- オンラインの専門家による相談
それぞれの窓口の特徴は、こちらの記事で詳しく比較しています。

「これって側音化構音?それとも様子を見ていい発音?」の判断だけでも迷う場合は、STこんの無料相談もご活用ください。
あわせて読みたい、発音についての記事
「い・し・ち」以外の音が気になる場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。




よくある質問
Q. サ行全部が苦手なのとは違うのですか?
はい、違います。「さかな」が「たかな」になるような誤りは、サ行という「行」全体が別の音に置き換わるタイプです。側音化構音は「い」の段(し・ち・き・り など)に限定して、音がこもる・濁るタイプの誤りで、仕組みも異なります。
Q. 練習すれば自然に治りますか?
年齢が上がるのを待つだけで自然に治ることは少なく、専門的な評価と段階を踏んだ練習が必要になることがほとんどです。気になる場合は、早めに専門家にご相談ください。
Q. 何歳ごろから練習を始められますか?
お子さんの集中力や、音を聞き分ける力の育ち具合によって適した時期が異なります。年齢だけで判断せず、まずは専門家に評価してもらい、練習を始めるタイミングを相談することをおすすめします。
「言えているはずなのに、なんだか気になる」という発音のサインは、見過ごされやすい分、早めに気づいてあげることが何よりのサポートになります。一人で抱え込まず、気になることがあればお気軽にご相談ください。

