リッカムプログラムとは?子どもの吃音を「あえて伝える」治療法を言語聴覚士が解説
これまで、子どもの吃音(どもり)について、「何歳から心配すべきか」「自然に治る目安」「幼稚園への伝え方」などをお伝えしてきました。多くの場合、吃音は成長とともに自然に目立たなくなっていきますが、「様子を見る」以外に、もう少し積極的にできることはないのだろうか、と感じる方もいらっしゃると思います。
今日は、幼児期の吃音に対する代表的な専門的アプローチ「リッカムプログラム」について、言語聴覚士の視点で解説します。

リッカムプログラムとは
リッカムプログラムは、オーストラリアで開発された、幼児期の吃音に対するエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療法です。2021年に国内の学会が発表した「幼児吃音ガイドライン」でも、もっとも推奨される支援法のひとつとして位置づけられています。専門の研修を受けた言語聴覚士のみがこの支援を行うことができます。
大まかな内容は、次のとおりです。
- 毎日15分程度の「おうちトレーニング」を、親子で行う
- 週1回程度、言語聴覚士との面談(おうちトレーニングの振り返りと指導)を行う
- お子さんがスムーズに話せたときに、その場で肯定的な声かけをする
- 1日を通した吃音の出方を、保護者が記録・評価する
言語聴覚士が直接お子さんを訓練するのではなく、保護者が日々の関わりの中心を担うのが大きな特徴です。だからこそ、次に説明する「あえて伝える」という部分に、戸惑う保護者の方が多くいらっしゃいます。
なぜ「あえて伝える」の?——不安に思う方へ
これまでの記事で、吃音のあるお子さんへの関わり方として「話し方を指摘しない」「言い直させない」という基本方針をお伝えしてきました。これは今も変わらない大切な考え方です。
ところが、リッカムプログラムでは、お子さんがスムーズに話せた瞬間に「今、上手にお話できたね」と伝えます。一見すると、これまでお伝えしてきた「指摘しない」という考え方と真逆に見えるかもしれません。「吃音を意識させることになって、かえって悪化するのでは?」と不安に思われるのは、とても自然なことです。
ここで大切なのは、リッカムプログラムでの声かけは、思いついたときに自由に行うものではない、という点です。
- スムーズに話せたときの、肯定的な声かけが中心であること
- 伝え方・タイミング・頻度に、明確なルールが定められていること
- 言語聴覚士の指導・観察のもとで、段階的に行われること
思いつきで「今どもったね」と指摘することと、専門的なルールに基づいて計画的に行うこととは、まったく別のものです。だからこそ効果が実証されている一方で、自己流で見よう見まねで行うことにはリスクが伴います(この点は後ほど詳しく触れます)。「あえて伝える」ことに違和感を持たれるのは自然な反応ですが、それは正しい理解と、専門家の伴走があってはじめて安全に行えるものだと知っておいていただきたいです。

「指摘しない」が基本、というこれまでのお話と矛盾しているように感じられた方も多いと思います。違和感を持たれるのは当然で、それだけこの手法が特殊だということです。だからこそ、自己判断ではなく専門家と一緒に進めていただきたいステップです。
「様子を見ていい吃音」と「検討していいタイミング」
以前の記事でお伝えしたとおり、幼児期の吃音の多くは、成長とともに自然に目立たなくなっていきます。ですので、吃音が出始めたからといって、すぐにリッカムプログラムのような専門的な介入が必要になるわけではありません。
次のような様子が見られる場合は、様子を見続けるのではなく、専門的な選択肢を検討してもよいタイミングだと考えられます。
- 吃音が始まって半年〜1年ほど経っても、改善の兆しが見られない
- 症状が徐々に重くなってきている(詰まり方が強くなる、体の動きを伴うなど)
- お子さん自身が、話しにくさを気にする様子が出てきた
- ご家族に吃音のあった方がいる(改善に時間がかかりやすい傾向があります)
リッカムプログラムは、主に未就学児(2〜6歳ごろ)を対象としたプログラムです。年齢が上がるほど、日々のトレーニングを継続する難しさも出てくるため、気になる場合は早めに相談し、選択肢として検討できる状態にしておくことをおすすめします。

自己流で行うことのリスク
ここまでの説明を読んで、「おうちトレーニングが中心なら、自分たちだけでもできそう」と思われた方もいるかもしれません。ですが、これは避けていただきたいです。
リッカムプログラムは「行動療法」という心理学の考え方をベースにしていて、声かけの内容・タイミング・頻度に厳密なルールがあります。適切な評価をせずに自己判断で声かけを行うと、意図せずお子さんに強いプレッシャーを与えてしまい、かえって吃音を悪化させてしまう恐れがあります。インターネット上の断片的な情報だけを頼りに、家庭だけで進めることは避け、必ず専門家の指導のもとで行ってください。言語聴覚士も誰もがこのプログラムを行えるわけではなく、専門の研修を受けた言語聴覚士のみが支援します。
日本で受けるには
正直にお伝えすると、リッカムプログラムに対応できる言語聴覚士は、国内ではまだ限られているのが実情です。すべての療育機関で受けられるわけではなく、対応可能な専門家を探すところから始める必要があります。
まずは、お子さんの吃音が今どのような状態で、専門的な介入を検討すべき段階かどうかを、専門家に確認するところから始めてみてください。
公的な相談窓口も含めた選択肢は、こちらの記事でまとめています。

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よくある質問
Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?
お子さんによって幅がありますが、数ヶ月〜1年程度、家庭でのトレーニングと専門家との面談を継続するのが一般的です。焦らず、専門家と相談しながらペースを決めていくことが大切です。
Q. 何歳から始められますか?
主に2〜6歳ごろの未就学児を対象としたプログラムです。年齢だけでなく、吃音の状態やお子さんの様子を見ながら、専門家が適した時期を判断します。
Q. 家庭だけで始めても大丈夫ですか?
おすすめできません。声かけの内容やタイミングには厳密なルールがあり、専門家の評価と指導なしに自己流で行うと、吃音を悪化させてしまう恐れがあります。必ず専門家と一緒に進めてください。
「指摘しない」がこれまでの基本でしたが、専門的なルールのもとで行うリッカムプログラムは、それとは異なる、エビデンスに基づいた選択肢のひとつです。違和感を持たれるのは自然なことですので、気になる方は、まず専門家に相談することから始めてみてください。

