吃音(どもり)と発音の誤りは違う|かきくけこが言えないのは吃音?言語聴覚士が解説
「かきくけこが言えない」「たちつてとに聞こえる」——これを「吃音(どもり)」だと思っていませんか?
実は、この2つはまったく異なる状態です。吃音と発音の誤りは原因も症状も違い、対応の仕方も変わります。この記事では、言語聴覚士の視点から「吃音」と「発音の誤り」の違いをわかりやすく解説します。

「うちの子は吃音?それとも発音の問題?」というご相談は非常に多いです。混同されやすいですが、きちんと見分けることが大切です。どちらも言語聴覚士が専門的にサポートできます。
吃音(どもり)とは?
吃音とは、話すときの「流暢さ(なめらかさ)」が乱れる状態のことです。特定の音が言えないのではなく、「話し始めにつかえる」「同じ音を繰り返す」「言葉が詰まる」といった症状が特徴です。
吃音の3つの症状
① 連発(繰り返し)
「ぼ、ぼ、ぼくは」のように、同じ音・音節を繰り返す。
② 伸発(引き伸ばし)
「ぼーーくは」のように、音を長く引き伸ばす。
③ 難発(ブロック)
「…(詰まる)ぼくは」のように、言葉が出てこない。
吃音が出やすい場面・特徴
- 文の話し始め(文頭)に症状が出やすい
- 緊張・興奮・急いでいるときに増えやすい
- 音読や独り言では出ないことがある
- 2〜4歳ごろに突然始まることが多い
- 日によって症状の波がある

発音の誤りとは?
発音の誤り(機能性構音障害)とは、特定の音を正しく作れず、別の音に置き換わる状態のことです。話すこと自体は流暢にできますが、特定の音だけが違って聞こえます。
置き換えが起こる仕組み
発音は、舌・唇・息のコントロールを組み合わせて作ります。このコントロールが未熟だったり、正しい作り方を習得できていない場合に、誤った音が出続けます。吃音とは異なり、常に同じパターンで同じ音が誤るのが特徴です。
よくある誤りのパターン
- か行→た行:「さかな」→「たたな」、「くつ」→「つつ」
- さ行→た行:「さかな」→「たかな」、「すいか」→「ついか」
- さ行→しゃ行:「さかな」→「しゃかな」、「すいか」→「しゅいか」
- た行→ちゃ行:「たこ」→「ちゃこ」、「てんき」→「ちぇんき」



吃音と発音の誤り、何が違う?
一番の違いは、「話す流暢さ(なめらかさ)の問題か」「音の作り方の問題か」という点です。
| 吃音(どもり) | 発音の誤り | |
|---|---|---|
| 問題の種類 | 話す流暢さの問題 | 音の作り方の問題 |
| 主な症状 | 繰り返し・引き伸ばし・ブロック | 特定の音が別の音に聞こえる |
| 流暢さ | 乱れる(つかえる・詰まる) | 乱れない(すらすら話せる) |
| 症状の一貫性 | 場面・日によって波がある | 常に同じ音が同じように誤る |
| 始まる時期 | 2〜4歳に突然始まることが多い | 発達の過程で徐々に気づく |
| 自然治癒 | 7〜8割は自然に回復 | 難しい音は訓練が必要 |
| 相談先 | 言語聴覚士・保健センター | 言語聴覚士・保健センター |
吃音は「話す流暢さ」の問題
吃音は、「どの音が言えるか・言えないか」ではなく、「スムーズに話せるかどうか」の問題です。「ぼ、ぼ、ぼくは」と繰り返したとしても、「ぼ」という音自体は正しく発音できています。話し始めや特定の場面でつかえやすいという特徴があり、日によって症状の波があります。
発音の誤りは「音の作り方」の問題
発音の誤りは、流暢さには問題がありません。「かかな」→「たかな」のように、すらすらと話せていますが、特定の音だけが別の音に聞こえます。また、常に同じ音が同じように誤るという一貫性があります。「か行」が全て「た行」に聞こえる、というように規則的に置き換わるのが特徴です。

「かきくけこが言えない」という相談を受けると、吃音ではなくほぼ確実に発音の誤り(機能性構音障害)です。吃音は特定の音が「言えない」のではなく、話の「流れ」が乱れる状態です。この違いを知っておくだけで、対応の方向性が見えてきます。
「うちの子はどっち?」見分け方チェックリスト
お子さんの様子を見ながら、当てはまる項目を確認してみてください。
吃音のサイン
- 「ぼ、ぼ、ぼく」のように同じ音・音節を繰り返す
- 「えーーっと」のように音を長く引き伸ばす
- 話し始めに言葉が詰まることがある
- 症状に波があり、日によって違う
- 緊張・興奮・急ぐときに症状が強くなる
- 話すことを嫌がったり、避けようとする様子がある
発音の誤りのサイン
- 「かきくけこ」が常に「たちつてと」に聞こえる
- 「さしすせそ」が常に「たちつてと」や「しゃしぃしゅ…」に聞こえる
- すらすら話せるが、特定の音だけが違って聞こえる
- いつも同じ音が同じように間違える(規則的)
- 話すことへの緊張や回避は見られない
両方ある場合も
吃音と発音の誤りが同時に見られるお子さんもいます。「つ、つ、つみき」(吃音)と言いながら、「つ」が「ちゅ」に聞こえる(発音の誤り)といったケースです。どちらが主な問題かは専門家が評価します。「なんとなく両方気になる」という場合も、言語聴覚士に相談してみてください。
それぞれの対応と相談タイミング
吃音の場合
2〜4歳で始まった吃音は、7〜8割が自然に回復します。発症後しばらくは様子を見ながら、以下の点に注意して関わりましょう。
- 「ゆっくり言って」「もう一度言って」と訂正しない
- 言い終わるまで口を挟まずに聞く
- 急かさず、ゆったり聞く時間を作る
以下の場合は早めに相談を:発症から6か月以上経っても改善しない/本人が気にしている・話すことを避けている/症状が悪化している。
発音の誤りの場合
発音の誤りは、成長とともに自然に改善するものと、専門的な指導が必要なものがあります。か行・さ行・た行の誤りは4〜5歳ごろまで様子を見ることが多いですが、5歳を過ぎても改善が見られない場合は言語聴覚士に相談しましょう。
- 家庭では、シャボン玉遊びなど「息のコントロール遊び」を楽しく取り入れる
- 文字(ひらがな)を読めるようになると発音の改善につながることがある
- 「ちゃんと言って」と訂正するのは逆効果
どちらか分からない場合
「吃音なのか発音の誤りなのか分からない」という場合は、言語聴覚士に相談するのが一番確実です。専門家が実際にお子さんの話す様子を確認して、どちらの問題なのか(または両方なのか)を評価してくれます。保健センターや小児科から紹介してもらうことができます。

吃音も発音の誤りも、言語聴覚士の専門領域です。「どちらか分からないから相談しづらい」と思わなくて大丈夫です。むしろ「分からないから相談する」が正解です。専門家が見れば、多くの場合すぐに判断できます。
よくある質問(Q&A)
Q. かきくけこが言えないのは吃音ですか?
いいえ、吃音ではありません。「かきくけこ」が「たちつてと」に聞こえるのは、発音の誤り(機能性構音障害)の可能性が高いです。吃音は「流暢さ」の問題で、特定の音が別の音に変わることとは異なります。すらすら話せているなら、吃音ではなく発音の誤りを疑ってください。
Q. 吃音と発音の誤りが両方あることはありますか?
はい、あります。吃音があるお子さんに発音の誤りが重なって見られることもあります。その場合、どちらを優先して対応するかは専門家が判断します。「なんとなく両方気になる」という場合は、まとめて言語聴覚士に相談してみてください。
Q. どちらも言語聴覚士に相談できますか?
はい、吃音も発音の誤りも言語聴覚士の専門領域です。「吃音か発音の誤りか分からない」という段階でも相談できます。保健センター・小児科・療育センターから言語聴覚士につないでもらうか、お住まいの都道府県の言語聴覚士会に問い合わせてみましょう。
Q. 吃音のある子が特定の音(か行・さ行)も言えない場合はどうすればいい?
吃音への対応と発音の誤りへの対応は異なるため、専門家に「どちらが主な問題か」「対応はどちらを優先するか」を見てもらいましょう。吃音の場合は急かさず見守ることが基本ですが、発音の誤りには専門的な指導が有効です。両方気になる場合は言語聴覚士に相談してください。
まとめ
- 吃音は「話す流暢さ」の問題。繰り返し・引き伸ばし・ブロックが症状
- 発音の誤りは「音の作り方」の問題。すらすら話せるが特定の音が別の音に聞こえる
- 「かきくけこが言えない」は吃音ではなく、発音の誤りの可能性が高い
- 吃音は2〜4歳に始まり7〜8割が自然回復。発音の誤りは5歳を過ぎても続く場合に相談を
- どちらか分からない場合も、言語聴覚士に相談すればOK

「どもっているの?それとも発音が悪いの?」と一人で悩まないでください。どちらも専門家が丁寧に見分けて、お子さんに合ったサポートを一緒に考えます。気になったら早めにご相談を。





