子どものどもりが突然始まった——吃音が出始めたときに親がまずやること【言語聴覚士が解説】
「昨日まで普通に話していたのに、急にどもりが始まった——」
突然のことで、驚いて不安になっているかもしれません。「私の育て方が悪かったの?」「このまま治らなかったら?」と、あれこれ考えてしまう気持ち、よくわかります。
この記事では、吃音が出始めた直後の「最初にやること・やってはいけないこと」に絞ってお伝えします。吃音の基礎知識(症状・原因・治るかどうか)については、別の記事で詳しく解説しています。まずは今の不安を少し整理するところから、一緒に考えましょう。

急にどもりが始まって、どうしたらいいか分からなくて焦っています。何をすればいいですか?

突然始まって驚かれているんですね。まず深呼吸してください。発症直後の関わり方が、その後の経過にとても大切です。一つずつ確認していきましょう。
言語聴覚士歴25年以上|STこん
この記事はこんな方に読んでほしい
・子どものどもりが突然始まって不安になっている
・発症直後にどう対応すればいいか知りたい
・いつまで様子を見ていいか、相談の目安を知りたい
吃音は「突然始まる」ことが多い
なぜ2〜4歳に突然起きやすいのか
吃音が出始めるのは、2〜4歳ごろがもっとも多い時期です。これは偶然ではありません。この時期はことばが急激に増える「ことばの爆発期」で、頭の中で伝えたいことがどんどん増えていく一方、それをことばにする力がまだ追いついていない状態です。
話したいことと、口から出ることばの速度がうまくかみ合わず、どもりとして現れることがあります。脳とことばの発達がぶつかる時期に起きやすい、ということです。
「きっかけ」はあっても「原因」ではない
「入園してから始まった」「引っ越しの後から始まった」「下の子が生まれてから始まった」——タイミングが重なると、それが原因だと感じやすいですよね。でも、これらは「きっかけ」であって「原因」ではありません。
吃音の発症には体質的な要因が大きく関わっており、環境の変化がすべての子にどもりをもたらすわけではありません。「あのとき○○しなければよかった」と自分を責める必要はありません。

「入園がストレスだったから?」「私の話し方が速すぎた?」と相談に来られる方は多いです。でも、吃音の原因はそんなに単純ではありません。ご自身を責めないでください。
まず確認してほしいこと——症状と本人の様子
どんな症状が出ていますか?
吃音の症状には大きく3種類あります。「ぼ、ぼ、ぼくね」と最初の音を繰り返す連発、「ぼーーくね」と音を引き伸ばす伸発、「……ぼくね」と最初の音が出てこない難発です。
発症直後は連発が多く見られます。難発(音が出てこない)が多い場合や、話すことを怖がる様子が見られる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
症状の詳しい内容・原因・自然治癒については、こちらの記事で解説しています。

子ども本人は気にしていますか?
発症直後に確認してほしい大切なポイントが、「子ども自身がどもりを気にしているかどうか」です。
気にしていない場合——本人はどもりに気づいておらず、楽しそうにしゃべっています。この場合は、周囲が過剰に反応しないことが最優先です。
気にしている場合——「うまく言えない」「話せない」と本人が感じていたり、話すことを避け始めている場合は、心のケアも含めて早めに専門家に相談してください。

吃音そのものより、「うまく話せない」という経験が積み重なって話すことへの恐怖心が育つことがあります。本人が気にしているかどうかは、早い段階で必ず確認してほしいポイントです。
発症直後にやってしまいがちなNG行動
心配するあまり、よかれと思ってやってしまいがちな行動があります。しかしこれらは、吃音を悪化させたり、子どもが話すことへの不安を強めるきっかけになることがあります。
❌「ゆっくり言って」「もう一度言って」と指示する
どもりを修正しようとする指示は、子どもに「うまく話せていない」という意識を強めてしまいます。言い直しをさせることは逆効果です。
❌ 子どもが言い終わる前に先取りして補う
「あ、○○ってこと?」と先回りして言葉を補うと、子どもは「自分では話せない」という経験を積んでしまいます。最後まで待つことが大切です。
❌ 心配そうな顔・様子を子どもに見せる
子どもは親の表情をよく見ています。親が不安そうにしていると、「何かまずいことが起きている」と敏感に感じ取ります。表情や態度を普段通りに保つことを意識しましょう。
❌ 吃音を直接指摘する
「またどもってる」「なんでうまく言えないの?」という言葉は、子どもの話すことへの自信を大きく傷つけます。どもりへの直接の言及は避けてください。
発症直後にやってほしいこと
まず親自身が落ち着く
最初にやってほしいことは、親自身が落ち着くことです。「治るかどうか」「どうすればいいか」の答えを今すぐ出そうとしなくて大丈夫です。焦りや不安は子どもにも伝わります。まず深呼吸して、今まで通りの温かい接し方を続けることが一番大切です。
いつも通りに接する・話しかけを減らさない
「どもるから、あまり話しかけない方がいいかな」と思う方もいますが、それは逆効果です。話しかける量を減らすと、ことばを使う機会が減り、発達にも良くありません。
いつも通りに話しかけ、ゆったりとした雰囲気で会話を楽しむことを続けてください。
ゆったり聞く時間を意識して作る
忙しい日常の中でも、1日に5〜10分、子どもが話すのをゆったり聞く時間を意識して作りましょう。テレビを消して、子どもの目を見て、最後まで急かさずに聞く。それだけで、子どもは「ゆっくり話していい」と感じられます。ママ・パパの話す速度を少しゆっくりめにするのもおすすめです。
記録をつけておく
発症直後から、簡単な記録をつけておくことをおすすめします。後から専門家に相談するとき、経過がわかる記録はとても役立ちます。
記録しておくとよい内容:
・いつ頃から始まったか
・どんな症状か(連発・伸発・難発)
・どんな場面で出やすいか(興奮しているとき・疲れているときなど)
・本人が気にしている様子はあるか
・改善している日・悪化している日のパターン

吃音は波があります。「今日はひどい」「今日は全然出ていない」という変動が繰り返されます。記録があると、「全体的には落ち着いてきている」という流れが見えやすくなり、親御さん自身の安心にもつながります。
いつまで様子を見ていい?——相談すべきサイン
吃音は、発症から半年以内に自然に回復するお子さんが多くいます。ただし、以下のサインが見られる場合は、早めに保健センターや言語聴覚士に相談することをおすすめします。
・発症から2〜3ヶ月経っても改善の様子がない
・症状が悪化している(連発が少なくなり、難発が増えてきたなど)
・子ども本人が話すことを怖がり始めた・話すことを避けるようになった
・「うまく言えない」「しゃべれない」と本人が言い始めた
・もうすぐ小学校入学を控えている
「様子を見る」は「何もしない」ではなく、「記録しながら変化を観察する」ことです。気になることがあれば、早めに相談してください。

「受診するほどじゃないかな」と迷ったら、相談してみてください。診断や療育が必要かどうかの判断は専門家がします。保護者の方は「話を聞いてもらいに行く」という気持ちで十分です。
「なぜうちの子が?」——自分を責めないために
「私の話し方が速すぎたから?」「怒りすぎたから?」「引っ越しをさせてしまったから?」——吃音が始まると、自分の育て方を振り返って責めてしまう方がとても多いです。
でも、吃音の発症には体質的な要因が約7割関わっているとされており、親の育て方や特定の出来事が直接の原因になるわけではありません。環境の変化は「きっかけ」になることはあっても、「原因」ではないのです。
あなたが何かを間違えたわけでも、あなたのせいでもありません。今からできることを一つずつやっていきましょう。
まとめ
突然どもりが始まったときに、まず大切なことをまとめます。
・吃音は2〜4歳のことばの爆発期に突然始まることが多い
・親の育て方や環境変化は「きっかけ」であっても「原因」ではない
・「ゆっくり言って」「もう一度言って」はNG。どもりへの直接の指摘も避ける
・いつも通りに接し、ゆったり聞く時間を作ることが最大の支援
・記録をつけておくと、経過の把握と専門家への相談に役立つ
・発症から2〜3ヶ月経っても改善しない、本人が気にし始めたら早めに相談を
今はとても不安かもしれません。でも、今日からの関わり方が、必ずお子さんの助けになります。

相談に来られる方の多くが「もっと早く来ればよかった」とおっしゃいます。迷ったら早めに動くことが、お子さんへの一番のサポートになります。

よくある質問(Q&A)
Q1. 保育園・幼稚園の先生に伝えた方がいいですか?
発症直後で症状が軽く、本人も気にしていない場合は、まず様子を見ながら必要に応じて伝える形で大丈夫です。本人が話すことを恥ずかしがっている、からかわれる心配がある場合は、担任の先生に「指摘せず、最後まで待って聞いてください」とお願いしておくと安心です。
Q2. 話しかけるのを減らした方がいいですか?
いいえ、減らす必要はありません。話しかける量を減らすと、ことばを使う機会が減り、発達にも良くありません。いつも通りに話しかけながら、ゆったり聞く雰囲気を心がけてください。
Q3. きょうだいにはどう説明すればいいですか?
小さいきょうだいには、特別な説明は必要ありません。「お兄ちゃん・お姉ちゃんが話しているときは、最後まで待ってあげてね」と伝える程度で十分です。真似をしたり、からかうような場合は、「からかうのはやめようね」とはっきり伝えてください。

