子どもの吃音(どもり)が心配なママ・パパへ|原因・家庭でできる対応を現役言語聴覚士が解説
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。「育て方の問題ではない」という視点と、ことばの理解力を大切にという思いで、保護者が安心して読める情報を発信しています。
子どもが突然どもり始めた…吃音かも?と心配しているママ・パパへ。現役言語聴覚士がその原因・自然治癒の目安・家庭でできる対応をわかりやすく解説します。
ある日突然、お子さんが「ぼ、ぼ、ぼくがね」とどもり始めたら、驚きますよね。「私の育て方が悪かったの?」「このまま治らなかったらどうしよう」と不安になるママ・パパも多いです。
でも、安心してください。吃音は親の育て方が原因ではありません。
この記事でわかること
・吃音の症状と、ただのどもりとの違い
・自然に治るのか・いつまで様子を見ていいか
・家庭でやってはいけない対応と、今日からできる関わり方
吃音(どもり)とは?子どもに多い3つの症状
吃音(きつおん)とは、言葉がなめらかに出てこない発話障害のひとつです。「どもり」とも呼ばれます。言いたいことはあるのに、スムーズに言葉が出てこない状態です。
子どもの吃音には、大きく分けて3つの症状があります。どれか1つのみのこともあれば、複数が組み合わさって現れることもあります。
① 連発(繰り返し)
「ぼ、ぼ、ぼくがね」「おか、おか、おかあさん」のように、最初の音や言葉の一部を何度も繰り返す話し方です。
3つの中で最もよく見られ、最初に気づかれやすい症状です。最初は「かわいい話し方だな」と思っていたら、ずっと続いている…というケースもよくあります。
② 伸発(引き伸ばし)
「ぼ〜〜くがね」のように、最初の音を引き伸ばす話し方です。
連発に比べて目立ちにくいですが、吃音に特徴的な症状のひとつです。音を伸ばしながら次の言葉を出そうとしている状態です。
③ 難発(ブロック)
言いたいことはあるのに、最初の言葉がなかなか出てこない状態です。口を開けたまま止まってしまったり、顔に力が入ったりすることがあります。
3つの中で最も重い症状で、話そうとするときに体の一部が動く「随伴運動」(まばたき・首振り・手足の動きなど)を伴うこともあります。

最初は連発から始まることが多く、伸長、難発へと進んでいくことがあります。また、連発と難発、伸長と難発等、症状が複数出ることも多いです。どんな症状であっても6ヶ月以上続くようであれば対応することが必要です。良い関わり方、NGの関わり方がありますので、日々の対応をしながら、相談機関に行きましょう。
子どもの吃音はなぜ起こる?原因を正しく知ろう
吃音が起こる原因は、まだ完全には解明されていません。ただ、現在の研究では以下の3つの要因が絡み合って発症すると考えられています。
体質的要因(原因の約7割)
吃音の原因の約7割は、もともと持っている「どもりやすい体質」や遺伝的な要因によるものと言われています。家族や親戚に吃音の人がいる場合、吃音になりやすい傾向があります。
昔は「育て方が原因」と言われていたこともありましたが、現在はその考えは否定されています。パパ・ママのしつけや関わり方が吃音の原因になることはありません。
発達的要因
2〜3歳は、言語能力が急速に発達する時期です。「話したい気持ち」が「発話できる能力」よりもはるかに先に進むため、言葉がうまく出てこないことがあります。
この意味で、吃音は「言葉の発達が盛んなことの副産物」とも言われています。
環境的要因
弟・妹の誕生、引越し、幼稚園や保育園への入園など、生活環境の変化が「きっかけ」になることがあります。ただし、これらは吃音の「原因」ではなく「きっかけ」です。もともとの体質がなければ、これらがあっても吃音にはなりません。

相談に来られるママの多くが、最初に「私の関わりが悪かったのかも」「あのとき怒らなければよかった」と話されます。でも、吃音は体質が主な原因です。ママ・パパのせいではありませんので、どうか自分を責めないでください。現状でできる対応をしっかりしていきましょう。
吃音は自然に治る?いつまで様子を見ていいか
7〜8割のお子さんは自然に回復します
吃音になった子どものうち、約7〜8割は就学前後(6〜7歳頃まで)に自然に回復すると言われています。特に発症から1〜2年以内に回復するケースが多く見られます。
ただし、残り2〜3割のお子さんは自然には回復せず、適切な専門的サポートが必要になることもあります。
様子を見てよい目安
以下にすべて当てはまる場合は、まずは様子を見ながら家庭での対応を続けましょう。
- 発症から6ヶ月未満
- 症状が連発(繰り返し)のみ
- 本人がどもることを気にしていない
- 4歳未満である
- 随伴運動(まばたき・首振りなど)がない
専門家に相談すべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに専門家(言語聴覚士・保健センター)に相談することをおすすめします。
- 発症から6ヶ月以上が経過している
- 難発(ブロック)の症状が出てきた
- 随伴運動(まばたき・首振りなど)が見られる
- 本人が話すことを避け始めた・しゃべりたがらなくなった
- 就学(小学校入学)が近い
- 吃音が悪化している・症状が増えてきた

このまま「様子を見ていていいのかな」という不安が続く場合は、相談だけでもしてみることをおすすめします。専門家に診てもらうことで適切な関わり方を教えてもらえること、「今は様子見でOK」「そろそろ訓練を始めましょう」という見通しが立ち、かえって安心できることが多いです。
発症から「いつまでに」相談すればいい?
幼児吃音臨床ガイドライン(2021年・日本吃音・流暢性障害学会)では、発吃から6〜12ヶ月以内に専門家への相談を行うことを推奨しています。「もう少し様子を見てから」と思っていても、発症から半年〜1年を目安に動き始めることが大切です。
6ヶ月経っても改善が見られない、または症状が重くなっているようであれば、早めに言語聴覚士や保健センターに相談しましょう。
就園年齢別の介入時期の目安(幼児吃音臨床ガイドライン 2021)
ガイドラインでは、幼稚園・保育園のクラス(年齢)ごとに介入開始時期の目安が示されています。
| クラス(年齢) | 介入方針の目安 |
|---|---|
| 年少(3歳クラス) | 経過観察的な支援を基本とする |
| 年中(4歳クラス) | 積極的な介入の開始を検討する |
| 年長(5歳クラス) | 積極的な介入の開始を推奨する |
ただし、これはあくまで目安です。同じ年齢でも、吃音の程度・本人の気づきや苦痛の有無・発達上の懸念の有無などによって判断が変わります。「表を見て焦った」という場合は、まず専門家に状態を評価してもらいましょう。

ガイドラインが「年長では積極的介入を推奨」としているのは、就学後は吃音に伴う不安や話すことへの回避が出やすくなるためです。学校生活が始まる前に専門家と一緒に対応策を整えておくことが、お子さんの自信につながります。
家庭でできる対応と、絶対にやってはいけないこと
❌ やってはいけないNG対応5つ

「子どもがどもったとき、『ゆっくり話してごらん』って声をかけてます!とよくお聞きします。

「実はそれ、逆効果なんです。『ゆっくり話して』という声がけは、お子さんに『あなたの話し方はおかしい』というメッセージを無意識に伝えてしまいます。プレッシャーを感じると、吃音が悪化してしまうことがあります。」
NG① 「ゆっくり話して」「落ち着いて」と言う
吃音への干渉・指摘になり、プレッシャーを与えます。
NG② 「もう一回言ってみて」と言い直しをさせる
「自分の話し方はダメだ」という意識を強め、話すことへの恐怖心が生まれます。
NG③ どもったことを指摘する・からかう
絶対にNGです。話すことが怖くなり、次第に話さなくなってしまうことがあります。
NG④ お子さんが話している途中で遮る・先回りして言葉を言ってあげる
「どうせうまく話せない」という思いにつながることがあります。最後まで聞いてあげることが大切です。
NG⑤ 親が心配そうな顔・困った顔を見せる
子どもは親の表情に敏感です。親が不安そうにすると、お子さん自身も「自分はおかしいのかも」と感じてしまいます。
✅ 家庭でできる5つの良い対応
OK① 最後まで焦らずゆっくり聞く
アイコンタクトを保ちながら、お子さんが話し終わるまで静かに待ちましょう。「ちゃんと聞いているよ」という安心感が、吃音を和らげる土台になります。
OK② 親がゆっくりとしたペースで話しかける
「ゆっくり話して」と言うのではなく、パパ・ママ自身がゆったりとしたペースでお子さんに話しかけましょう。自然に「こんなペースでいいんだ」と感じさせることができます。
OK③ 話の内容をしっかり受け止める
どもり方より、話してくれた内容に注目して返しましょう。「そうなんだね、楽しかったね!」と内容に応じた返事をすることが大切です。
OK④ どもっても気にしない空気を作る
吃音を「なかったこと」にするのではなく、ごく自然に普通に話しかけ続けましょう。「どもっても大丈夫」という安心感のある雰囲気が、お子さんの心の支えになります。
OK⑤ プレッシャーのない会話の時間を増やす
急かされない・評価されない状況での会話(遊び・絵本・散歩など)を日常的に作りましょう。楽しいやりとりの中では吃音が出にくくなることが多いです。

療育センターでの相談で最も多いのが「どう対応すればいいか分からない」という声です。まずはNG対応を1つやめることから始めてみてください。それだけでもお子さんの安心感が変わってきます。
保育園・幼稚園の先生への伝え方と園でのサポート
📄 先生に渡せる「配慮依頼シート」があります
伝え方・お願いしたい配慮・場面別の対応例を1枚にまとめたPDFを無料配布しています。そのまま印刷して担任の先生にお渡しください。

吃音があることを園の先生に伝えておくことは、とても大切です。先生が知らないままだと、クラスの子どもたちから「なんでそんな話し方するの?」と指摘されたとき、適切な対応ができないことがあります。
先生に伝えておくこと
- 吃音があること
- 本人がまだ気にしていない(または、本人も気にしている)こと
- 他の子どもたちに「吃音があるよ」と説明しないでほしいこと
- 最後まで話を聞いてあげてほしいこと
- 「ゆっくり話して」「もう一回言って」という声がけはしないでほしいこと
発表について
発表の場面では、本人が希望する場合はOKですが、指名して無理に言わせることは避けてもらいましょう。特に吃音が出やすい場面(緊張・大勢の前・急かされるとき)を減らすことが大切です。
「おはよう」「ありがとう」「おかわりください」等、あいさつなどがどもってうまく言えないことが多いです。ことばの最初の音が母音「あ・い・う・え・お」の場合、出にくいお子さんが多いです。無理に言わせないように担任の先生に伝えましょう。代わりにお辞儀をする、お皿を先生に差し出す等、お子さんが楽に振る舞える状況が理想です。

先生への伝え方に不安がある場合は、保健センターの保健師さんや言語聴覚士に「どう伝えればいいか」を相談してみてください。一緒に園への手紙を作ってくれる機関もあります。
専門家(言語聴覚士)に相談するタイミング
前述の「専門家に相談すべきサイン」に当てはまる場合や、「様子を見ていていいのか不安」という気持ちが続くときは、専門家に相談してみましょう。
相談窓口の選び方
まずはお住まいの地域の保健センターに連絡して、保健師さんに相談するのがおすすめです。地域によって対応は異なりますが、言語聴覚士に繋いでもらったり、言語聴覚士のいる病院・療育センターを紹介してもらえることが多いです。
相談後の流れ
- 言語聴覚士による評価(吃音の種類・程度・本人の気づきなどを確認)
- 訓練の適応判断(様子見でよいか、訓練を始めるかを相談)
- 必要であれば訓練開始
早めに相談することで「今は様子見で大丈夫」という安心感を得られたり、もし訓練が必要な場合も早期に対応できます。相談=すぐに訓練開始ということではありませんので、気軽に相談してみてください。
ガイドラインが示す、積極的な介入が必要なケース
幼児吃音臨床ガイドライン(2021)では、以下の条件を満たす場合に積極的な介入を推奨しています。
- 吃音の程度が中等度以上(難発・随伴運動がある)
- 発症から6ヶ月以上が経過しても改善が見られない
- 発達上の気がかり(発達障害の傾向など)を伴っている
- 本人が話すことを嫌がる・意識している
一方、吃音が軽度で発達上の気がかりがない場合は、まず経過観察的な支援が推奨されています。「相談=すぐ訓練開始」ではなく、専門家に評価してもらったうえで個別に方針を決めるのが基本的な流れです。
なお、吃音の訓練は一般的に1〜2年程度かかることが多いとされています(幼児吃音臨床ガイドライン 2021)。長期的な関わりになりますが、早めに始めることで就学前に安定しやすくなります。
よくある質問 Q&A
Q1:吃音は遺伝しますか?
吃音は遺伝的な体質が関係しています。家族や親戚に吃音の人がいる場合、吃音になりやすい傾向があります。ただし、体質が影響するというだけで、必ず遺伝するわけではありません。
Q2:テレビやスマホが吃音の原因になりますか?
テレビやスマホが直接吃音の原因になるという科学的根拠はありません。ただし、スクリーンを見ている時間が長いと、親子の会話が減ることがあります。吃音への対応として「親とのゆっくりした会話の時間を増やす」ことが大切なので、その点で意識していただけるといいと思います。
Q3:弟・妹が生まれたことが原因になりますか?
弟・妹の誕生は吃音のきっかけになることがあります。ただし、あくまで「きっかけ」であり「原因」ではありません。体質的にどもりやすいお子さんが、環境の変化によって症状が出やすくなることがあります。
Q4:吃音は必ず治りますか?
約7〜8割のお子さんは就学前後までに自然に回復します。残り2〜3割のお子さんは自然には回復しない場合もありますが、言語聴覚士による専門的な訓練で改善が見込めることが多いです。「治す」ことだけを目標にするのではなく、お子さんが「吃音があっても楽しく話せる」環境を作ることも大切な視点です。
Q5:男の子の方が吃音になりやすいですか?
はい、男の子の方が吃音になりやすいと言われています。男女比は約2〜4対1と報告されており、男の子の方が多い傾向があります。理由は完全には解明されていませんが、言語発達のスピードの違いなどが関係していると考えられています。
Q6:吃音の訓練(治療)はどれくらいかかりますか?
個人差がありますが、幼児吃音臨床ガイドライン(2021)では、治療期間の目安として1〜2年程度かかることが多いとされています。早く始めるほど就学前に安定しやすくなります。焦らず、専門家と一緒に長期的に関わっていくことが大切です。
Q7:幼児吃音臨床ガイドラインとは何ですか?
日本吃音・流暢性障害学会が2021年に発行した、幼児期の吃音に関するエビデンスに基づいた臨床ガイドラインです。自然治癒率・介入タイミングの目安・積極的介入が必要なケースの条件など、専門家が判断の基準とする指針がまとめられています。
まとめ
- 吃音には連発・伸発・難発の3種類がある
- 原因の約7割は体質的・遺伝的要因で、育て方のせいではない
- 約7〜8割のお子さんは自然に回復するが、6ヶ月以上続く・難発がある・本人が話すことを避け始めた場合は専門家へ
- 「ゆっくり話して」「もう一回言って」はNG。最後まで聞いて、内容を受け止めることが一番の対応
- 保育園・幼稚園の先生にも伝えて、連携して対応することが大切

吃音は親のせいではありません。でも、親の対応によってお子さんの吃音が楽になることは確かです。「正しく知ること」と「焦らず正しい対応をすること」が、一番のサポートです。一人で抱え込まずに専門家に相談してくださいね。
吃音が出始めたばかりの方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。



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