子どもの滑舌が悪い原因とは?言語聴覚士が教える口呼吸との関係と家庭でできること
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。
「サ行がタ行になる」「話している内容が、家族以外には聞き取りにくい」。お子さんの発音について、ふとした瞬間に不安がよぎることはありませんか。相談室でも「滑舌が悪い気がするけれど、様子を見ていいのか、練習させた方がいいのか分からない」というご相談を本当によくお受けします。
「うちの子、滑舌が悪いかも」と感じたら、まず知ってほしいこと
発音の完成には個人差があります
子どもの発音は、生まれたときから完成しているわけではなく、成長とともに少しずつ獲得されていくものです。すべての音を大人と同じように発音できるようになる年齢にはかなりの個人差があり、一般的には5〜6歳前後で9割ほどのお子さんが正しく発音できるようになると言われています。
「滑舌が悪い」の多くは、成長の途中経過です
3歳や4歳のお子さんの発音がたどたどしいのは、多くの場合、発達の途中経過であって異常ではありません。療育センターで25年以上お子さんを見てきましたが、「今できないこと」だけを見て焦ってしまうご家族はとても多いです。まずは、いつ頃までにどの音が獲得されるものなのか、次の章で目安を確認してみましょう。

「まわりの子と比べて、うちの子だけ遅れているのでは」と心配される方が多いのですが、発音の獲得には音ごとに順番があります。焦る前に、まずはその子なりのペースを知ってあげてください。
滑舌が悪くなる、主な原因
口呼吸と口まわりの筋力不足
普段から口を開けたまま呼吸をしていると、舌や唇、頬の筋肉が育ちにくくなります。正しい発音には、舌を上あごの正しい位置に当てたり、唇をしっかり閉じたりする細かい動きが必要ですが、口呼吸の習慣があると、この動きが弱くなりやすいことが指摘されています。慢性的な鼻炎などで口呼吸になっているケースもあるため、気になる場合は耳鼻科へ相談に行きましょう。
舌小帯(舌の裏のすじ)の影響
舌の裏側には「舌小帯」と呼ばれるすじがありますが、これが生まれつき短い、あるいは突っ張っている場合、舌を上に持ち上げる動きが制限され、サ行やラ行などの発音がしづらくなることがあります。近年、小児歯科の分野では「口腔機能発達不全症」という名称で、食べる機能・話す機能が十分に育っていない状態を診断・評価する取り組みも進んでいます。気になる場合は、小児歯科や口腔外科に相談に行きましょう。
耳の聞こえ・音の聞き分け
正しい発音を身につけるには、まわりの音を正確に聞き取れていることも大切な土台になります。中耳炎を繰り返している場合など、聞こえの状態が発音の獲得に影響していることもあるため、発音の心配と合わせて、聞こえの状態も一度確認しておくと安心です。特に子どもは痛みのない滲出性中耳炎にかかりやすいので、鼻水等がなくても一度、耳鼻科の診察を受けて鼓膜の状態を診てもらうことをオススメします。
年齢別、発音の獲得の目安
発音は、次のような順序で少しずつ獲得されていくのが一般的な目安です。
- 2歳頃まで:マ行、バ行、パ行、ヤ行、ワ行、ナ行、タ・テ、ダ・デ・ド
- 2〜4歳頃:カ行、ガ行、チ・チャ行、シ・ジ・ジャ行、ハ行
- 4〜5歳頃:サ・ス・セ・ソ、ザ・ズ・ゼ・ゾ、ツ、ラ行
サ行やラ行は、日本語の音の中でも獲得が遅く、難しい音とされています。4歳頃にサ行やラ行が言えなくても、それだけで心配しすぎる必要はありません。
5歳を過ぎても不明瞭なとき
5歳を過ぎても発音の不明瞭さが目立ち、家族以外の人には話の内容が伝わりにくいという場合は、一度、言語聴覚士などの専門家に相談することをおすすめします。
まずは、お住まいの地域の保健センターに常駐している保健師に相談してみましょう。様子を聞いた上で、今後の対応について一緒に考えてくれます。早めに相談したからといって、必ず訓練が必要になるわけではありません。まずは今の状態を確認するつもりで、気軽に相談してみてください。
家庭でできる口腔トレーニング
あいうべ体操
「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口を動かす「あいうべ体操」は、口まわりの筋肉や舌の動きを育てる体操として広く知られています。1日数回、親子で顔を見合わせながら一緒に行うと、お子さんも楽しみながら続けやすくなります。毎日、お風呂の湯船に浸かりながら一緒にやってみてはどうでしょうか。毎日続けることが大切です。
にらめっこ遊び
「にらめっこしましょ、あっぷっぷ」で遊びましょう。顔のいろいろな筋肉を動かして、表情を変化させるので、意図的に顔周りの筋肉を動かす力がつくこと、普段は使わない筋肉に意識がいくことで、口周りの筋肉も自然と鍛えられます。
遊びながらできる口まわりのトレーニング
シャボン玉を吹く、風船を膨らませる、麺類やストローを使った飲み物を選ぶなど、日常の遊びや食事の中にも、口まわりの筋肉を自然に使う場面がたくさんあります。「トレーニングをやらせる」というより、「楽しい遊びの延長で、自然と口や舌をよく使う機会を増やす」というくらいの気持ちで取り入れてみてください。
毎日の関わり方で気をつけたいこと
発音を直接訂正せず、正しい発音でさりげなく返す
お子さんが「さかな」を「たかな」と言ったとき、「違うよ、『さかな』でしょ」と訂正したくなる気持ちはよく分かります。ですが、発音そのものを指摘されると、子どもは「話すこと」自体に自信を失ってしまうことがあります。そんなときは、「そう、たかな(さかな)、美味しそうだね」というように、お子さんの発言を受け止めながら、さりげなく正しい発音で返してあげてください。訂正するのではなく、自然な会話の中で「正しい音のお手本」を耳から聞かせてあげる、というイメージです。

相談室でも「発音を直そうとして何度も言い直させていたら、話すこと自体を嫌がるようになってしまって…」というご相談をよくお受けします。発音の正しさよりも、まず「話したい」という気持ちを大切に育ててあげてください。
たくさん話すことが、何よりのトレーニングになります
発音は、口や舌のまわりの筋肉をたくさん使うことで、少しずつ上達していきます。特別な訓練をしなくても、親子でたくさん会話をすること自体が、口まわりの筋肉を育てる自然なトレーニングになります。「まだ滑舌が完成していないから」と話す機会を減らすのではなく、むしろ積極的に話しかけて、お子さんにもたくさん話してもらう機会を作ってあげてください。
「話の内容」をしっかり聞いてあげてください
発音が気になると、どうしても「今、正しく言えたかどうか」に意識が向きがちです。ですが、お子さんが本当に伝えたいのは、発音ではなく「話の内容」です。たとえ発音が不明瞭でも、まずは何を伝えようとしているのかに耳を傾け、「へえ、そうなんだ」としっかり反応してあげてください。「ちゃんと聞いてもらえた」という経験の積み重ねが、話すことへの自信につながり、結果として発音の上達にも良い影響を与えてくれます。
こんな様子があれば、専門家に相談を
次のような様子が見られる場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
- 5歳を過ぎても、家族以外の人に話の内容が伝わりにくい
- 特定の音だけでなく、全体的に発音が不明瞭
- いつも口が開いている、口呼吸の様子がある
- 食事の際、うまく噛めない・飲み込みにくい様子がある

特定の音が言えない場合は、こちらもチェック
「か行だけ」「さ行だけ」など、特定の音に絞って気になる場合は、それぞれの行に特化した記事もあわせてご覧ください。




滑舌の完成には時間がかかるお子さんもいますが、多くの場合、日々の会話の積み重ねの中で少しずつ上達していきます。それでも不安が消えない、様子が気になるという場合は、どうか一人で抱え込まず、専門家にいつでも相談してください。

