オウム返しは発達障害のサイン?言語聴覚士が教える見極め方
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。
「何か聞いても、同じ言葉をそのまま返してくる」「CMのフレーズばかり言っている」。お子さんのオウム返しに気づいたとき、「これって発達障害のサインなのでは」と不安になる方は少なくありません。相談室でも、このオウム返しについてのご相談は本当に多く寄せられます。
オウム返し(エコラリア)とは何か
言葉を覚える過程でよく見られる、自然な行動です
オウム返し(専門的には「エコラリア」と呼びます)は、相手の言った言葉をそのまま繰り返す行動のことです。1〜2歳頃、言葉を覚えていく過程で多くのお子さんに見られる、ごく自然な現象です。
「即時性」と「遅延性」、2つのタイプがあります
エコラリアには、大きく分けて2つのタイプがあります。一つは「即時性エコラリア」で、人が言った言葉を、聞いた直後にそのまま真似するものです。もう一つは「遅延性エコラリア」で、以前どこかで聞いたCMのフレーズやYouTube動画、テレビの台詞などを、時間が経ってから、その場面とは関係なく口にするものです。どちらも、お子さんが日常の中で耳にした言葉を、記憶し、再現しているという意味では共通しています。
オウム返しの背景にある、2つの心理
楽しくて、一人で真似して遊んでいる場合
お気に入りのフレーズや、リズムの良い言葉を、ただ楽しくて何度も口にしていることがあります。この場合は、遊びの延長として言葉そのものを楽しんでいる状態です。
質問の意味が分からず、困って真似してしまう場合
「今日、何して遊んだの?」と聞かれたときに、答えが分からず、そのまま「何して遊んだの?」と聞いた言葉を繰り返してしまうことがあります。これは、質問の意味を理解できていない、あるいはどう答えていいか分からず困っている状態で起こりやすい反応です。実は、オウム返しは「楽しくて真似している」ときよりも、「分からなくて困っている」ときの方が出やすい傾向があります。

オウム返しが出たときは、「困っているサインかもしれない」という視点で見てあげてください。質問が難しすぎなかったか、もう少しシンプルな聞き方に変えられないか、振り返ってみるだけでも関わり方が変わってきます。
オウム返し=発達障害、というわけではありません
定型発達の子にも、1〜2歳頃によく見られます
オウム返しは、発達障害の有無にかかわらず起こる行動です。特に1〜2歳頃、言葉を獲得していく途中の時期には、定型発達のお子さんにも一時的によく見られます。ことばを真似できるようになるのも、ことばの発達の一過程です。ことばは大人が発したことばを真似しながら覚えていくものです。多くの場合、語彙が増えて自分の言葉で話せるようになるにつれて、自然と減っていきます。
自閉スペクトラム症の子には多く見られる傾向があります
一方で、発話のある自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんの約85%にエコラリアが見られるというデータもあり、ASDとの関連が指摘されているのも事実です。ただし、オウム返しがあるからといって、それだけでASDと判断できるものではありません。次の章で紹介する、オウム返し以外の様子もあわせて見ていくことが大切です。
見極めるために、オウム返し以外に見てほしいポイント
アイコンタクト・指さし・共同注意
名前を呼んだときに目が合うか、興味のあるものを指さして大人に伝えようとするか、大人が指さした方向を一緒に見るか(共同注意)といった様子、楽しいね!面白いね!という気持ちをお子さんと視線を合わせて共有できるか、といった様子は、コミュニケーションの土台となる大切なサインです。
対人関心・こだわりの強さ・感覚の特性
他の子どもや大人への関心があるか、特定の物の並べ方や手順に強いこだわりがあるか、音や光、感触などに対して人一倍敏感、あるいは鈍感な様子がないか、といった点も、あわせて確認しておきたいポイントです。オウム返し単体で判断するのではなく、こうした様子を総合的に見ていくことが大切です。
オウム返しへの、家庭での関わり方
訂正せず、意味のあるやりとりとして返す
「オウム返しはやめさせなきゃ」と考える必要はありません。たとえば「何して遊んだの?」と聞き返された場合は、「そうだよね、今日は公園で遊んだね」というように、大人が答えを言葉にして返してあげてください。訂正するのではなく、自然な会話の中で正しいやりとりのお手本を見せてあげるイメージです。質問したときや、なんて答えていいか分からないときにオウム返しが出やすいので、質問の内容を答えやすい易しいものに変えることもオススメです。○○か△△どっちにする?YesかNoで答えられる質問にしてみましょう。
オウム返しも、コミュニケーションの一歩として受け止める
オウム返しは、一見すると意味のない繰り返しに見えるかもしれませんが、お子さんなりに「何か伝えよう」「やりとりに応じよう」としている、コミュニケーションの一歩でもあります。まずはその姿勢を受け止めながら、少しずつ質問をシンプルにしたり、選択肢を示してあげたりすることで、答えやすい状況を作ってあげてください。
こんな様子があれば、専門家に相談を
次のような様子が重なって見られる場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
- 名前を呼んでも振り向かない、目が合いにくい
- 指さしをしない、大人の指さしを見ない
- 3歳を過ぎても、オウム返しばかりで自分の言葉が増えない
- 特定の物や手順への強いこだわりがある


オウム返しがあるからといって、それだけで心配しすぎる必要はありません。多くの場合、言葉の発達の一過程です。大切なのは、オウム返しの奥にある「伝えたい」という気持ちを受け止めながら、その子のペースに寄り添っていくことです。それでも不安が消えない場合は、どうか一人で抱え込まず、専門家にいつでも相談してください。

