夏休みに家庭でできる、ことばを伸ばす関わり方【言語聴覚士が解説】
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。
もうすぐ夏休み。「この長いお休み、ことばの発達のために何かしてあげたい」と思う一方で、「特別なことをする時間も余裕もない」と感じている方も多いのではないでしょうか。実は、特別な教材や訓練は必要ありません。この夏を思い切り楽しむこと!その夏ならではの体験そのものが、ことばを育てる何よりの教材になります。
夏休みは、ことばを育てる絶好のチャンスです
生活リズムが変わることのメリット
夏休みは、いつもと違う時間の使い方ができる特別な期間です。園や学校のスケジュールに縛られない分、親子でゆっくり過ごす時間、じっくり会話をする時間が自然と増えます。この「時間にゆとりがある」ことこそ、ことばを育てる一番の環境です。
特別な教材がなくても大丈夫
「夏休みに何か特別な教材を買った方がいいのでは」と考える方も多いのですが、実は日々の体験そのものが、何よりのことばの教材になります。夏ならではの経験を親子で楽しみながら、自然にことばを引き出していく方法をご紹介します。
夏ならではの体験で、ことばを引き出そう
特別な準備をしなくても、夏休みには「ことば」を育てるきっかけがたくさんあります。お出かけ先でも、おうちの中でも、体験そのものが会話の種になります。
お出かけ編:虫探し・海遊び・お祭り
- 虫探し:公園や庭で虫を探して、捕まえて、観察してみましょう
- 海遊び:砂遊び、波と触れ合う、貝殻拾いなど
- お祭り参加:屋台、盆踊り、花火大会など
これらの体験は、「見て」「触れて」「感じて」ということばが自然に生まれる場面の宝庫です。「わあ、大きいセミだね」「冷たいね、気持ちいいね」など、その場で感じたことをそのまま言葉にして伝えてあげるだけで、十分な関わりになります。
おうち編:プール遊び・かき氷作り・花火
- プール遊び:水に浮く、もぐる、水をかけあうなど
浮き輪、水着、ゴーグル等のことばも覚えられます - かき氷作り:氷を削る、シロップを選ぶ、色や味を楽しむ
氷を作るところから親子で一緒にやりましょう。
触ると冷たいね、だんだん溶けるね、削るとかき氷になることを体験できます。 - 花火:色、音、形を楽しむ
家では、手持ち花火がオススメです。ロウソクに火をつける。火は危ないよ。
終わったら、バケツの水の中に入れようね等、火の扱い方も経験できます。
おうちの中でも、夏ならではの体験はたくさんあります。かき氷を作るときに「今日は何味にする?」と聞いてみたり、花火を見ながら「どんな色が好き?」と聞いてみたり。ちょっとした選択を伴う会話が、ことばのやりとりを引き出すきっかけになります。
こうした体験の合間に、ぜひ写真を撮っておいてあげてください。実は、この写真が後で大きな役割を果たしてくれます。
体験を「ことば」につなげる、1日の終わりの習慣
「今日、楽しかったこと」を聞いてみる
1日の終わりに、その日撮った写真を親子で一緒に見返しながら、「今日、一番楽しかったことは何だった?」と聞いてみてください。写真という手がかりがあることで、お子さんは体験を思い出しやすくなり、ことばにする練習になります。まだ長い文章で話せない年齢のお子さんでも、「セミ!」「冷たかった!」など、単語だけで十分です。大切なのは、体験したことを振り返って、誰かに伝えるという経験を積み重ねることです。

相談室でも「毎日同じ質問をしても答えてくれない」という声を聞きますが、写真という具体的な手がかりがあると、お子さんもぐっと話しやすくなります。ぜひ試してみてください。
夏が終わった後に、この夏の体験を1冊のフォトブックにするのはどうでしょうか。フォトブックを見ながら親子で思い出話をして、ことばの発達も促せます。詳しい記事は以下をご覧ください↓↓↓

年齢別・夏休みにおすすめのことばがけ
1〜2歳:生活の中の実況中継
この時期は、お子さんが興味を持って見ているもの、お子さんが実際にしていることを「ことば」にして実況してあげるのが効果的です。「お水、冷たいね」「セミさん、鳴いてるね」というように、今起きていることをそのまま言葉にしてあげましょう。
3〜4歳:会話のキャッチボールを増やす
好きなことや、興味あることをテーマにした絵本等を使っていきましょう。花火をしたり、お祭りに行ったときには、花火やお祭りに関する絵本を読みながら、経験を振り返ることをオススメします。楽しい経験があれば、自然とお子さんはお話をいっぱいしてくれます。質問することは極力しなくて大丈夫です。絵本を楽しみながら、「○○ちゃんは、〜だったよね」と絵本と比較して話してあげれば十分です。体験と絵本のセットは、ことばの発達を促す近道です。
5歳以降:体験を「ことば」にする練習
この時期は、体験したことをさらに深堀りしていきましょう。虫取りの後に、虫の図鑑を一緒に見る、捕まえた虫を家で育ててみる、虫の育て方をネットで調べる等、体験したときだけでなく、その後の時間も含めて「虫」について、一緒に考えていくことで、自然とことばの力がついてきます。
ひらがなを読もう(年長さんにおすすめ!)
ひらがな文字がまだ読めない、あまり興味のないお子さんには、この夏に文字を読めるようになるといいですね。小学校入学に向けて、文字学習を進めていきましょう。ポイントは、書くことではなく読めるようになることです。以下に詳しいやり方を書きましたので、参考にしてください。

毎日の生活の中でできる、ことばを育てる関わり方
お手伝いをことばがけのチャンスに変える
洗濯物をたたむ、野菜を洗う、玄関のお掃除をするなど、夏休みならではの時間のゆとりを活かして、お手伝いをお願いしてみるのもおすすめです。「ハンガー取って」「これはパパのだね」「パパのは大きいね」「次はどれをやろうか?」など、作業の中に自然な会話を挟んでみてください。
しりとり・ことば遊びを移動時間に取り入れる(3歳以上のお子さんに)
車での移動中や、電車を待っている時間など、ちょっとした隙間時間に、なぞなぞ、しりとりや連想ゲームを取り入れるのもおすすめです。特別な準備がいらず、親子でどこでも楽しめます。ことば遊びについては、下記の記事を参考にしてください。

気をつけたい、やりすぎ注意なこと
「お勉強」にしすぎない
ことばを育てたいという気持ちが強くなるあまり、「これは何て言うの?」と何度も問い詰めてしまうと、お子さんが話すこと自体を負担に感じてしまうことがあります。あくまで遊びや体験を楽しむことを優先し、ことばはその延長線上にあるものと考えてください。
完璧な返事を求めない
言い間違いや、単語だけの返答であっても、まずは「話してくれた」ことを喜んであげてください。正確さよりも、「伝えようとした」という経験の積み重ねが、この時期には何より大切です。
夏休み明けに、様子が気になったら
夏休みの間にたくさん関わっても、「言葉の増え方がゆっくりだな」「会話がなかなか続かないな」と感じることもあるかもしれません。そうした様子が続く場合は、夏休み明けの機会に、一度専門家に相談してみることも検討してみてください。

夏休みは、いつもより少しだけ、お子さんとじっくり向き合える特別な時間です。特別なことをしなくても、一緒に過ごす時間そのものが、ことばを育てる何よりの栄養になります。今年の夏も、親子でたくさんの「楽しかった」を積み重ねてくださいね。

