数字が言えない・数えられないのは大丈夫?言語聴覚士が教える「数のことば」の育ち方
「数字を教えているのに、なかなか覚えない」「1から10まで言えているはずなのに、実は分かっていない気がする」——数のことで、こんな不安を感じたことはありませんか。
実は、数の育ちには「ことばの育ち」が深く関わっています。この記事では、言語聴覚士の視点から、数字が言えない・数えられないことの意味と、年齢別の目安、家庭でできることをお伝えします。
「数字が言える」と「数えられる」は別のこと
「いちにーさんしーごーろくしちはちきゅうじゅう!」と、早口で最後まで言えるお子さんは多いです。ですが、目の前にあるリンゴを指して「これ、何個ある?」と聞くと、答えられないことがあります。
これは、決して珍しいことではありません。「数字を順番に言えること」と「実際の個数を数えられること」は、まったく別の力だからです。
- 数字を順番に言う力:「いち、に、さん…」を、ひとつながりの音として覚えている段階
- 実際に数える力(数の概念):モノをひとつずつ指しながら「いち、に、さん」と対応させ、最後に言った数字が全体の個数を表すと分かる力
数字と読む力:1を「いち」、2を「に」、、、と読む力は、ひらがな文字を読めるようになるよりも早く身につくことが多いです
数字がすらすら言えても、モノの数と結びついていなければ、「数えられる」段階にはまだ届いていません。逆に、数字はたどたどしくても、指をさしながら丁寧に数えられているなら、着実に育っているサインです。
なぜ「数のことば」は語彙の一部なのか——言語聴覚士の視点
「いち」「に」「さん」ということばは、「わんわん」「まんま」と同じように、ひとつの語彙(ボキャブラリー)です。そして、語彙が育つ道すじは、数字もそれ以外のことばも変わりません。
- 音として聞き、まねして言えるようになる
- その音と、実際のモノ・数量が結びつく。数字と音が結びつく。
- 状況に応じて、自分から使いこなせるようになる。
発語がまだ少ないお子さんは、数字ということばもなかなか出てきにくい傾向があります。逆に、数字が好きで、他のことばより先に数字がたくさん出てくるお子さんもいます。これは、他の語彙の育ちに個人差があるのと同じことです。
つまり、「数字が言えない・数えられない」という悩みは、算数の得意・不得意である前に、ことばの育ちの一部として捉えることができます。全体のことばの育ちと比べて、数字だけが極端に遅れていないかを見ることが、判断のひとつの手がかりになります。

「さんすうができるかどうか」より前に、まずは「ことばとして育っているか」という視点で見てあげると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
年齢別の目安
発達には個人差がありますが、大まかな目安は次のとおりです。
| 年齢 | 項目 |
|---|---|
| 2〜3歳 | 1〜5くらいまでの数字を、順番に言える。 2までの数概念がわかる |
| 3〜4歳 | 1〜10まで数字が順番に言える。 3までの数概念がわかる。 3までの数字が読める。 |
| 4〜5歳 | 少ない数(4個程度)ならモノを指しながら数えられる。 5までの数概念がわかる。 5までの数字が読める。 |
| 5〜6歳 | 1〜20までの数字が順番に言える。 10までのモノを、指さしながら正確に数えられる。 5までの数のの操作ができる。例:1と2を合わせて3 |
「4歳で九九が言える」「もう足し算ができる」といった話を聞くと焦ってしまうかもしれませんが、他のお子さんと比べすぎず、ひとつずつの段階を踏んでいるかを見てあげてください。

おうちでできること
数字カードを見せて丸暗記させるより、生活の中でモノの数と結びつける関わり方がおすすめです。
- おやつを配るときに「2個ずつね」「もう1個でおしまいね」
- 「積み木を3つ持ってきて」など、数を含んだお願いをしてみる
- 階段の上り下りで「1、2、3…」と一緒に数える
- お風呂を出る前に、一緒に10まで
- エレベーターのボタンを一緒に押す。「3階にいくよ、3を押して」
- 「こっちとこっち、どっちが多い?」とクイズにして遊ぶ
「勉強させよう」と意気込むより、遊びや日常のやりとりに数を混ぜていく方が、無理なく身についていきます。
相談したほうがいいサイン
次のような様子がある場合は、様子を見続けるより、専門家に相談してみることをおすすめします。
- 年齢の目安を大きく過ぎても、数字をことばとして言おうとしない
- 指さしや、ものとものを対応させる様子がほとんど見られない
- 数字以外の語彙も、全体的に少ない・増えていかない
- 数字だけには強い興味を示すが、会話や指示の理解が気になる
数の遅れだけを切り離して心配しすぎる必要はありませんが、ことば全体の育ちとあわせて気になる場合は、一度専門家に見てもらうと安心です。
お子さんの発達全体の目安をまとめて確認したい方は、こちらのチェックシートもご活用ください。


よくある質問
Q. 数字にだけ強い興味を示すのですが、大丈夫でしょうか?
数字や乗り物の名前など、特定の分野に強い関心を持つお子さんは珍しくありません。それ自体は心配のいらないことが多いですが、会話のやりとりや指示の理解など、ことば全体の育ちも合わせて見てあげると安心です。
Q. 周りの子と比べて焦ってしまいます。
数の育ちには個人差が大きく、「〇歳だから〇〇できるはず」と決めつけすぎないことが大切です。年齢の目安はあくまで参考にとどめ、お子さん自身が少しずつ段階を踏めているかを見てあげてください。
Q. 算数障害が心配です。
算数障害(算数の学習だけに著しい困難がある状態)は、就学後の学習の様子から判断されることが多く、未就学の時点で診断がつくものではありません。今の時点で心配しすぎず、気になることがあれば専門家に相談しながら、経過を見ていくとよいでしょう。

日々のやりとりの中で数のことばに触れる機会を増やしながら、気になることがあれば一人で抱え込まずご相談ください。

