きょうだいや双子はことばが遅い?上の子と比べて焦る前に知ってほしいこと
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。
「上の子はこの時期、もっと話していた気がする」「双子なのに、片方だけことばが少ない」。きょうだいや双子を育てていると、どうしても子ども同士を比べてしまい、その差に不安を感じることがあります。相談室でも、こうした「比べてしまう」ことへの戸惑いは本当によくお聞きする悩みです。
「上の子と比べて遅い」と感じたら、まず知ってほしいこと
きょうだいでも、ことばの発達には大きな個人差があります
同じ家庭で、同じように育てているつもりでも、ことばの発達のペースはお子さん一人ひとりで大きく異なります。これは、性格や興味の向き方、周囲との関わり方など、さまざまな要素が影響し合った結果であり、「育て方が悪かったから」というものではありません。
「下の子だから」ではなく、その子自身のペースで見てあげてください
「下の子は上の子がいるから自然に言葉を覚えるはず」と思われがちですが、実際はその逆のケースも珍しくありません。大切なのは、上の子や周りの子と比べることではなく、その子自身が少しずつでも育っているかどうかという視点です。
きょうだいで発達に差が出やすい、いくつかの理由
性格や興味の違い
おしゃべりが好きな性格の子もいれば、じっくり観察するタイプでことばが出るまでに時間がかかる子もいます。これは持って生まれた気質による部分が大きく、優劣の問題ではありません。
上の子が代弁してしまう環境
下の子が何かを伝えようとする前に、上の子が「〇〇したいんだよね」と先回りして代弁してしまうことがあります。さらに、ゴニョゴニョと何らかしゃべっていても、きょうだいだと何を言っているのか、不思議と分かるようです。ママ・パパには分からなくてもです。これが続くと、下の子は自分で伝える、しっかりと伝える必要性を感じにくくなり、結果として発語の機会が減ってしまうことがあります。
家庭内での自分の位置づけの違い
上の子と下の子とでは、家庭内での役割や、周囲からの関わられ方が自然と異なります。ママ・パパからすると、同じように育てていても、どうしてもお兄ちゃんだからと兄としてしっかりしなさい!という意識があるし、下の子にはどうしてもいつまでも赤ちゃん扱いして、何でもやってあげる、こういう親の意識の違いも成長のペースに影響することがあると考えられています。
双子・多胎児のことばの発達で、知っておきたいこと
双子は早産になりやすく、「修正月齢」で見る必要があります
双子・三つ子は単胎児に比べて早産になりやすく、出生体重が少ない傾向があります。そのため、実際に生まれた日ではなく、本来の出産予定日を基準にした「修正月齢」で発達を見ていく考え方が大切です。出生体重が1,500g未満の場合は成長を2歳頃まで、発達を3歳頃まで修正月齢で評価することが一般的で、実月齢だけで比べると、必要以上に「遅れている」と感じてしまうことがあります。
双子だけに通じる「双子語」という現象
双子には「双子語(クリプトフェイジア)」と呼ばれる、二人だけに通じる独自の言葉が生まれることがあります。双子の約4割に見られるとも言われ、周囲の大人には理解できなくても、双子同士では意味が通じ合っている状態です。多くの場合、成長とともに周囲の共通言語を覚える中で自然に消えていくため、これ自体を心配しすぎる必要はありません。

双子ちゃんを育てているご家庭からは「二人だけで通じ合っていて、ことばが増えないのでは」と心配される声もありますが、双子語はことばの発達の一過程として知られているものです。まわりのことばに触れる機会を増やしてあげることを意識してみてください。
家庭でできること:1対1の時間を大切に
絵本の読み聞かせや遊びを通した、丁寧な関わり
きょうだいがいると、どうしても一人ひとりへの関わりが分散しやすくなります。1日のうちほんの5分でもいいので、その子と1対1になれる時間を作ってみてください。そして、お子さんの大好きな絵本を一緒に読む、おもちゃで一緒に遊ぶなど、大人がその子だけに向き合う時間そのものが、ことばを育てる何よりの働きかけになります。
ことばのゆっくりさが気になる子には、特に大切な時間
特にことばの発達がゆっくりだと感じるお子さんには、この1対1の時間を意識的に増やしてあげることをおすすめします。上の子やきょうだいが自然に代わりに話してしまう環境では、その子自身が「自分で伝える」経験を積みにくくなりがちです。1対1で向き合う時間を作ることで、その子のペースでじっくりことばを引き出してあげることができます。

「きょうだいがいると、どうしても手が回らなくて…」というご相談をよくお受けします。毎日でなくても大丈夫です。週に数回、ほんの短い時間でも「あなただけを見ているよ」という時間を作ってあげることが、お子さんにとって大きな安心につながります。
こんな様子があれば、一度相談を考えてみてください
きょうだいや双子との比較にかかわらず、次のような様子が見られる場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
- 1対1で関わる時間を増やしても、言葉が増える様子がみられない
- 2〜3歳を過ぎても、意味のある言葉がほとんど出ない
- 名前を呼んでも振り向かない、指さしをしない
- 一度獲得したはずの言葉が減っている(言語退行)

きょうだいや双子を育てていると、どうしても比べる気持ちが生まれてしまうのは自然なことです。ですが、ことばの発達はその子自身のペースで進んでいくものです。焦らず、その子だけを見つめる時間を大切にしてあげてください。それでも不安が消えない場合は、どうか一人で抱え込まず、専門家にいつでも相談してください。

