5歳児健診で「ことばの相談」を勧められたら|担当STが解説
5歳児健診の事後相談で、「ことばの相談を受けてみてください」と案内されると、「うちの子、何か問題があるのかな」と不安になる方は少なくありません。しかも、相談で何をするのかは、受けた人にしか分からないものです。
この記事では、5歳児健診で「ことばの相談」を実際に担当している言語聴覚士の立場から、相談につながるきっかけ、当日の流れ、相談のあとに言われることを具体的にお伝えします。
「ことばの相談」を勧められても心配しすぎなくて大丈夫
ことばの相談を勧められたからといって、問題があると決まったわけではありません。保護者の方の心配事や、健診の中でのお子さんの様子をふまえて、「一度ことばの専門職に見てもらうと安心できそう」と医師が判断した窓口のひとつです。
5歳児健診全体の流れや、5つの相談窓口については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ことばの相談につながる主なきっかけ
私の自治体で多いのは、健診の最初に行う問診がきっかけになるケースです。保健師などがお子さんに、「何幼稚園に行っているの?」「お昼ごはんは何を食べたの?」といった質問をします。
このとき、発音のつたなさや吃音がないかを確認しています。特に、幼稚園や保育園の名前のような固有名詞は、初めて会う相手が聞き取れるかどうかを判断する、よい材料になります。
もちろん、保護者の方が問診票に書いた心配事や、医師の診察で気になったことがきっかけになる場合もあります。
【現場から】ことばの相談、20分の流れ
ここからは、私が担当している自治体でのことばの相談のようすをご紹介します(自治体名は伏せさせていただきます)。
相談会場は、「個室に入る」というより、広い部屋が仕切りで区切られていて、心理相談、ことばの相談、栄養相談などが同時に行われているイメージです。1組あたりの時間は20分ほどです。
- お子さんとあいさつ、自己紹介をします
- 発音が気になる場合は、1音ずつ私のまねをして言ってもらいます
- まねをしてもらいながら、発音の状態と、その原因を探ります
- 保護者の方の心配事をうかがいます
- 現在の状況の考え方、今後の方向性、今できることをアドバイスして終了します
1音ずつのまねっこをしてもらうときには、発音そのものだけでなく、聞いた音を覚えておく力(聴覚の把持力)、自分の発音の間違いに気づいて直そうとする力(自己修正力)、落ち着いて取り組めているかといった点も、あわせて見ています。発音が未熟になっている原因を探るためです。

使う道具は特にありません。おしゃべりとまねっこが中心なので、お子さんにとっては遊びの延長のような時間です。
緊張して話せなくても大丈夫です
初めての場所で、初めて会う大人を前にすると、緊張して話せなくなるお子さんもいます。そんな場合でも心配はいりません。無理にしゃべらせることはありません。
そのかわりに、保護者の方に「他の場面でも緊張しやすいですか」「家ではどうですか」「園ではどうですか」とうかがいながら進めます。健診当日の様子だけで判断するのではなく、普段の姿をあわせて見ていくためです。当日のために、ことばの練習をさせておく必要もありません。
相談のあとに言われること
私の自治体では、ことばの相談のあとに、言語聴覚士のいる専門機関へつなぐ割合は1割以下です。ほとんどの場合は、その場でのアドバイスで終わります。
相談で一番多いのは、「1音ずつなら言えるけれど、単語や文章になるとあいまいになる」というケースです。早口でいいかげんにしゃべってしまう場合に多く、ことばそのものの問題というより、不注意の傾向や、全体的な体の使い方の未熟さが関係していることがほとんどです。
5歳前後は、サ行・ラ行などにまだ幼さが残るお子さんもいる時期です。発音の目安については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

吃音(どもり)が気になる場合は、こちらの記事が参考になります。

相談の前に準備しておくとよいこと
特別な準備は必要ありませんが、次のようなことをメモしておくと、相談がスムーズです。
- どの音が、どんな場面で言いにくいか(単語のときか、早口のときか など)
- 家と園で、話し方に違いがあるか
- つっかえることがある場合は、いつごろから、どのくらいの頻度か
- 普段のおしゃべりのようすをうつした短い動画(あれば)
健診当日は緊張して、普段のようには話せないことも多いため、普段の様子が分かる情報はとても役に立ちます。
よくある質問
Q. 緊張して一言も話せなかったら、どうなりますか?
無理にしゃべらせることはありません。保護者の方から、家や園での様子、他の場面でも緊張しやすいかどうかをうかがいながら進めますので、話せなくても相談は成り立ちます。
Q. 家ではどもるのに、当日はどもりませんでした。
吃音は、日や場面によって出方に波があるのが特徴です。当日に出なかったとしても、心配なことは遠慮なく伝えてください。いつごろから、どんな場面で出るのかをうかがうことで、様子を判断する材料になります。
Q. ことばの相談を受けたら、専門機関に通うことになりますか?
私の自治体では、専門機関につなぐのは1割以下で、ほとんどの場合は相談の場でのアドバイスで終わります。ただし、対応は自治体によって異なります。
Q. 5歳で発音が幼いのは、おかしいのでしょうか?
5歳前後は、サ行・ラ行などにまだ幼さが残るお子さんもいる時期で、必ずしもおかしいことではありません。単語や文章になるとあいまいになる場合は、ゆっくり、はっきり話す機会を増やすことで整ってくることもあります。
ことばの相談は、お子さんを評価する場というより、保護者の方の心配事に寄り添い、「今できること」を一緒に考える場です。案内されたときは、安心して受けていただければと思います。気になることが残る場合は、一人で抱え込まずご相談ください。

