小学生の吃音(どもり)|学校での困りごと・ことばの教室・家庭での関わりを言語聴覚士が解説
「小学生になっても吃音が治らない…」「音読の授業が心配」「友達にからかわれたらどうしよう」——そんな不安を抱えている保護者の方へ。
この記事では、小学生の吃音に特有の困りごとと、学校・家庭でできる対応を言語聴覚士の視点から解説します。「ことばの教室」(通級指導教室)の活用方法も詳しくお伝えします。

小学生になると、音読・発表・友達関係など、吃音が目立ちやすい場面が増えます。でも、小学生になってからでも改善は十分に期待できます。一人で抱え込まず、学校と連携しながら進めていきましょう。
小学生になっても吃音が続いている
幼児期に始まった吃音はどうなる?
吃音は2〜4歳ごろに始まることが多く、その約7〜8割は就学前までに自然に回復すると言われています。しかし、残りの2〜3割のお子さんは小学校入学後も吃音が続きます。
小学生になっても吃音が続いている場合、自然回復の可能性はゼロではありませんが、専門的なサポートを受けることで改善が期待できます。「様子を見ていれば治る」と放置するより、早めに動いた方がお子さんの心理的な負担を軽減できます。
小学生になってから始まる吃音もある
幼児期に吃音がなかったお子さんでも、入学後の環境の変化・緊張・プレッシャーをきっかけに吃音が始まることがあります。新しい環境や人前で話す場面が増える小学校入学は、吃音が現れやすいタイミングのひとつです。
突然吃音が始まった場合の対応については、こちらの記事も参考にしてください。

小学校での困りごと
音読・発表・スピーチ
小学校では音読・発表・スピーチなど、人前で話す場面が多くなります。吃音のあるお子さんにとって、これらの場面は特に緊張しやすく、症状が出やすい状況です。
- 音読で詰まるたびにクラスが静まり返るのが怖い
- 発表で手を挙げたいのに、うまく言えるか不安で手が挙げられない
- スピーチや朝の会の「一言」が苦痛になる
こうした経験が積み重なると、「話すこと」自体を避けるようになったり、登校を嫌がるようになることもあります。早めに担任の先生に伝え、配慮をお願いすることが大切です。
友達からのからかい・いじめへの対応
「どどどどうしたの?」などとまねされたり、笑われたりする経験は、お子さんの自尊心を深く傷つけます。吃音に対するからかいは、本人が気にしているかどうかにかかわらず、見過ごさないことが重要です。
担任の先生には「もし友達からからかいがあった場合は早めに教えてほしい」とお願いしておきましょう。先生が事前に吃音について理解していれば、クラス全体への適切な働きかけもしてもらいやすくなります。
先生の対応が症状に与える影響
悪意のない先生の言葉でも、吃音の症状を悪化させることがあります。特に以下のような対応はNGです。
- 「ゆっくり言って」「落ち着いて」と声をかける
- 詰まっているときに先を促したり、代わりに言ってしまう
- 音読や発表を無理に続けさせる
先生に吃音のことを伝え、正しい理解と配慮をお願いすることが、お子さんの学校生活を守ることにつながります。
小学生の吃音、治る可能性は?
小学生でも改善が期待できる
「小学生になったら手遅れ」ということはありません。言語聴覚士によるリハビリや、ことばの教室(通級指導教室)での指導を受けることで、小学生になってからでも吃音の改善が期待できます。
特に、症状そのものの改善だけでなく、吃音と上手に付き合う力(自己受容・コミュニケーション力)を育てることも、小学生への支援の大切な柱です。吃音が完全になくならなくても、「話すことが怖くない」状態を目指すことができます。
放置するリスク——本人のメンタルへの影響
吃音そのものより、「吃音があることへの恐れ・恥ずかしさ」が積み重なることで、自己肯定感が低下したり、人前で話すことを避けるようになるリスクがあります。これを「二次的問題」と呼びます。
小学校時代に適切なサポートを受けることは、症状改善だけでなく、お子さんが自分らしく話せる自信を育てるためにも重要です。

吃音のある子が「話すのが嫌だ」「自分はダメだ」と感じるようになることが、私は一番心配です。症状が残っていても「話すことが楽しい」と思えるお子さんに育てることが、支援の大切なゴールのひとつです。
ことばの教室(通級指導教室)とは?
「ことばの教室」は、発音・吃音・言語発達などに支援が必要なお子さんが、通常学級に在籍しながら個別指導を受けられる場所です(学校によって「ことばときこえの教室」とも呼ばれます)。教育委員会が設置しており、公立小学校であれば無償で利用できます。
どんな指導が受けられるか
- 吃音の症状への個別アプローチ(話し方の練習・リラクゼーション)
- 人前で話す自信をつけるコミュニケーション練習
- 吃音への心理的なサポート(自己受容・不安の軽減)
- 保護者への相談・アドバイス
指導は週1〜2回程度、授業を抜けて別の教室で行われることが多いです。授業を抜けることへの心理的な負担が気になる場合は、先生と相談して配慮してもらいましょう。
利用するための流れ・手続き
ことばの教室を利用するには、以下のような流れが一般的です。
- ① 担任の先生・養護教諭・特別支援コーディネーターに相談する
- ② 学校から教育委員会へ申請(学校が窓口になります)
- ③ 判定・就学相談を経て通級開始
まずは担任の先生か、学校の特別支援コーディネーターに「ことばの教室を利用したい」と相談するところからスタートしましょう。自治体によって手続きが異なるため、学校を通じて確認することをおすすめします。
担任の先生への伝え方とお願いしたい配慮
学校に伝えておくべきこと
- 吃音があること・どんな症状が出るか(繰り返し・引き伸ばしなど)
- 本人が吃音を気にしているかどうか
- 特に困っている場面(音読・発表など)
- 専門家(言語聴覚士)に相談中かどうか
具体的にお願いしたい配慮
- 詰まっていても、最後まで待って聞いてほしい
- 「ゆっくり言って」「落ち着いて」などの声かけはしないでほしい
- 音読は事前に読む箇所を教えるなど、準備できる配慮をしてほしい
- 友達からのからかいがあった場合は早めに知らせてほしい
幼稚園・保育園への伝え方については、こちらの記事も参考にしてください。小学校でも基本的な考え方は共通しています。

家庭でできること
親の関わり方・やってはいけないこと
家庭での関わり方は、吃音の幼児期と基本的に変わりません。
- ❌「ゆっくり言って」「もう一度言って」と訂正しない
- ❌ 詰まっているときに先取りして言ってしまわない
- ❌ 吃音のことを本人の前で頻繁に話題にしない
- ✅ 最後まで焦らず聞く・目線を合わせてゆったり聞く
- ✅ 話す内容に関心を持ち、話せたことを自然に受け止める
- ✅ 家庭がリラックスできる場所であることを意識する
子ども自身のメンタルをサポートする
小学生になると、お子さん自身が吃音を意識し始め、「自分はおかしいのかな」「みんなと違う」と感じることがあります。親としてできる一番大切なことは、「あなたのことをそのまま受け入れている」というメッセージを日々の関わりで伝えることです。
- 吃音があっても学校や友達の話を楽しそうに聞く
- 「うまく話せなくていい。伝わったよ」と声をかける
- 吃音以外の得意なことや好きなことを一緒に楽しむ

話し方」より「話す内容」に関心を持ってあげてください。お子さんが「ちゃんと聞いてもらえた」と感じる経験が、吃音と上手に付き合う力の土台になります。家庭が一番安心して話せる場所であることが、何より大切です。
よくある質問(Q&A)
Q. 小学生になると吃音はひどくなりますか?
入学直後は環境の変化による緊張から一時的に症状が強くなることがあります。ただし、環境に慣れてくると落ち着くケースも多いです。「ひどくなった」と感じても、すぐに悲観せず、まず専門家に相談してみましょう。長期的に見て改善しない・悪化している場合は、ことばの教室や言語聴覚士への相談をおすすめします。
Q. ことばの教室に入ると授業は遅れますか?
週1〜2回程度、授業を抜けて指導を受けるため、その授業の内容を後でフォローする必要はあります。ただし、多くの場合は先生や学校が配慮してくれます。「授業が遅れるのでは」という心配より、吃音への早めのサポートで得られるメリットの方が大きいと考える保護者の方が多いです。担任の先生と連携を取りながら進めましょう。
Q. 吃音があっても普通学級でいいですか?
はい、吃音のあるお子さんの多くは通常学級に在籍しながら、ことばの教室(通級指導)を利用しています。吃音は知的発達や学習能力とは無関係です。通常学級での生活を送りながら、必要なサポートを受ける形が一般的です。
まとめ
- 小学生になっても吃音は改善が期待できる。放置せず早めにサポートを
- 音読・発表・友達関係など小学校特有の困りごとには、担任の先生への情報共有と配慮のお願いが有効
- 「ことばの教室」(通級指導教室)では吃音への個別指導が受けられる。まず担任や特別支援コーディネーターに相談を
- 家庭では「最後まで聞く・訂正しない・安心できる場所を作る」ことが基本
- 症状だけでなく、お子さんの自己肯定感・コミュニケーション力を育てることも大切な目標

吃音があっても、自分らしく話せるお子さんに育てることができます。学校・家庭・専門家が連携して支えることで、お子さんの可能性は大きく広がります。一人で抱え込まず、まず相談してみてください。



