スマホ・動画は子どものことばの発達に影響する?言語聴覚士が伝えたい本当のこと
この記事の執筆・監修
STこん(言語聴覚士)
国家資格・言語聴覚士|小児専門25年以上|発音・ことばの遅れ・吃音の臨床を担当。
「家事をしている間だけ、スマホで動画を見せてしまう」「気づいたら1時間以上、DVDを見せっぱなしにしていた」。相談に来られるママ・パパから、こうした声を本当によく聞きます。そして決まって、その後にこう続きます。「これって、ことばの発達に悪いですよね……」と、申し訳なさそうに。
「スマホをやめさせられない私はダメな親?」その罪悪感、実は多くのママ・パパが抱えています
罪悪感を持つ必要はありません
先に、はっきりお伝えしたいことがあります。スマホや動画を見せてしまうことに、罪悪感を持つ必要はありません。25年以上、療育センターや相談室で子どもたちとご家族を見てきましたが、「一度も動画を見せたことがない」というご家庭に出会ったことは、正直ほとんどありません。
大切なのは「付き合い方」
大切なのは「見せたかどうか」ではなく「どう付き合っているか」です。この記事では、スマホ・動画視聴とことばの発達の関係について、専門機関の提言と臨床の実感の両方から、できるだけ具体的にお伝えしていきます。

相談室でも「うちだけ動画に頼ってしまって…」と申し訳なさそうに話される方がとても多いです。でも、そのことばの奥にあるのは「ちゃんと育てたい」という気持ちそのもの。それだけで、もう十分頑張っていらっしゃると思います。
動画とことばの発達、STこんが臨床の現場で感じていること
専門機関が示す年齢別の目安
日本小児科医会は2004年、「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」という提言の中で、「2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう」と呼びかけました。また、すべてのメディア接触の総時間を1日2時間までを目安とすることも合わせて提言しています。世界保健機関(WHO)も、1歳未満の乳幼児にはスクリーンタイムを推奨せず、2〜4歳では1時間以内にとどめるよう勧告しており、アメリカ小児科学会(AAP)も同様に、2〜4歳では質の高いコンテンツに限定して1日1時間程度を目安とするよう提言しています。
臨床の現場で見えてくること
ただし、実際にお子さんの様子を診ていて感じるのは、「動画を見た時間そのもの」よりも、「その時間、まわりの大人とのやりとりがどれくらいあったか」が、ことばの育ちに大きく関わっているということです。同じ1時間の動画視聴でも、黙って画面だけを見ている時間と、隣で「あ、ワンワンだね」と大人が言葉を添えている時間とでは、子どもが受け取っている「ことばの経験」はまったく違います。
「見せる時間の長さ」より、実は大事なこと
ことばは「双方向のやりとり」で育つ
ことばは、一方通行の音や映像だけでは育ちにくいという性質があります。子どもがことばを獲得していく過程では、「大人が自分に向けて話しかけてくれている」「自分が発した声や指さしに、大人が反応してくれる」という、双方向のやりとりがとても重要な役割を果たします。動画は基本的に一方通行のため、どれだけ内容が優れていても、この「やりとりの経験」を代わりに与えることはできません。
見る時間の長さより「関わり方」を見直す
ここが、この記事で一番お伝えしたいポイントです。「動画を見せる=ことばの発達に悪い」と単純に考えるのではなく、「見せている間、その子はどれだけ人とのやりとりを経験できているか」という視点で捉え直してみてください。もちろんママ・パパが家事等で忙しく、相手ができないから動画を見ててもらうこともOKです。それでは、次項で年齢ごとの付き合い方を見ていきましょう。
年齢別・スマホ動画との付き合い方の目安
専門機関の提言を参考に、年齢別の目安をまとめます。あくまで目安であり、この時間を少し超えたからといって、それだけで発達に問題が出るというものではありません。
- 1歳未満:基本的に見せる必要はありません。どうしても必要な場面(移動中など)に限定するイメージで十分です。
- 1〜2歳:見せる場合も1日1時間以内を目安に。なるべくひとりで見せきりにせず、そばでことばを添える時間をつくることも意識してみてください。
- 2〜4歳:質の良いコンテンツを選び、1日1時間程度までを目安に。見た内容について「さっき何が出てきたっけ?」「わんわんが怒っていたよね」等、後から会話に繋げるのがおすすめです。
- 4歳以降:時間の長さよりも、生活リズム(睡眠・外遊び・会話の時間)とのバランスが取れているかを見てあげてください。幼稚園保育園での友だちとの会話にキャラクターや動画の内容も含まれてきます。週末は、戦隊ものやプリキュア等を見る時間を確保してあげていいです。一緒に見たり、見た後に内容についてお話できるといいですね。
こんな様子があれば、一度相談を考えてみてください
動画の視聴時間を見直しても、次のような様子が続く場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
- 名前を呼んでも振り向かない、目が合いにくい
- 1歳半を過ぎても意味のある単語がほとんど出ない
- 指さしをしない、大人の指さしを見ない
- 動画を見ていないときも、他者への関心が薄いと感じる

「様子見でいいのか、相談すべきなのか」の判断に迷ったときは、動画の視聴時間だけでなく「名前を呼んだときの反応」や「指さし」など、人とのやりとりのサインを見てあげてください。

罪悪感を手放して、今日からできる小さな工夫
すべての動画時間を「ことばのやりとりの時間」に変える必要はありません。家事や仕事で手が離せない時間があるのは当然のことです。ここでは、無理なく取り入れられる工夫を3つご紹介します。
- 見る前に一言添える:「今から〇〇(好きなキャラクター)見ようね」「○と△どっちを見たいの?」と声をかけるだけでも、ことばと状況を結びつける経験になります。
- 1日1回、内容について話す:見終わった後に「さっき何が出てきた?」と一往復だけ会話をしてみる。
- 「ながら見」より「一緒見」を少しだけ:可能なタイミングだけでいいので、隣に座って「あ、これ好きだよね」と一言添えてみる。
- 終わりをしっかり伝えておく:1つ見たら終わりだよ。時計の針が6になったら終わりだよ。タイマーをかけておいて、30分でピピッと鳴るように設定しておくのもおすすめです。

スマホや動画は、正しく付き合えば、子育てを助けてくれる便利な道具にもなります。大切なのは「時間の長さ」を気にして自分を責めることではなく、「どう関わるか」に少しだけ意識を向けてみることです。スマホや動画を親子のコミュニケーション、会話のきっかけにどんどん使っていきましょう。そうすることで、ことばの発達も促されていきます。
それでも不安が消えない、様子が気になるという場合は、どうか一人で抱え込まず、専門家にいつでも相談してください。

